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3月7日に放送された「世界一受けたい授業」、本屋大賞で話題になったノンフィクション本「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」の著者・プレイディみかこさんが授業を行ってくれました。
毎年話題になる、本当に優れた本、本屋大賞。2019年、本屋大賞のノンフィクション部門で大賞に輝いた本、「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」。書店員さんもナンバー1と絶賛する本。
著者ブレイディみかこ先生がわかりやすく解説してくれた内容をまとめてみました。
子どもから大人まで、学ぶことが多い本です。
目次
著者 ブレイディみかこ先生
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「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」は、毎日出版文化賞・特別賞を受賞したほか、9つもの賞を受賞。
今話題の本の内容がこの授業を見ればわかる!
「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」の著者はブレイディみかこ先生(54歳)
この本は実話。
イギリスの港町・ブライトン。
日本人のライター・ブレイディみかこ先生とアイルランド人の夫の間に生まれ、厳格なカトリックの小学校で児童会長をしていた息子。
彼が選んだ中学校は、市の学校ランキングで少し前まで最下位だった中学校。
しかし今は音楽やダンスなど、子どもたちがやりたいことを自由にできる方針に切り替えて、成績が上がり始めました。
人種も貧富もごちゃまぜの中学校。
ただでさえ難しい年頃なのに、毎日が事件の連続。
人種で悩んだり、貧困問題でぎすぎすしたり。
そんな時、息子のノートの片隅に「I'm yellow,white,and blue・・・a little bit」(ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー)と書かれているのを見て、ブレイディみかこ先生は、息子に何があったのかを気にしていたようです。
この息子の走り書きがそのままタイトルになったノンフィクション本。
僕はそこまで自分を東洋人とは思ってない
母ちゃんは、自分のこと東洋人だと思ってるよね。
多分僕はそこまで自分を東洋人とは思ってないっていうか、ピンと来ない。
僕はどこかに属している気持ちになれない
著者のブレイディみかこ先生がイギリスから緊急来校!
超話題のノンフィクション「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」について解説してくれました。
夏休み明けに驚いたこと
イギリスの中学校に通っているブレイディみかこ先生の息子さん。
夏休みが終わった後登校し、友達に「どんな夏休みだった?」と聞くと、友達は、「ずっとお腹が空いていた」と答えたんだそう。
イギリスでは、子どもの総人口の3分の1が貧困家庭だというデータがあるようです。
中学校に入学したブレイディ先生の息子。
彼はそこで初めて貧困問題を目の当たりにしたということです。
イギリスの公立校 フリーミール制度
「フリーミールどれくらい残ってる?」と話している同級生。
息子さんは、フリーミールって何?と質問。
イギリスの公立校には、フリーミール制度があるんだそう。
フリーミール制度:失業保険や生活保護を受ける貧しい家庭の子どもは食べ物が無料
学食で好きな食べ物や飲み物を無料で受け取ることができるというもの。
しかし、フリーミールには限度額があり、1日およそ320円。(1ヶ月約6400円)
ピザが2ピースでほぼ終わり。水を買うとオーバー。
育ち盛りの中学生はすぐ使い切ってしまい、その後昼食を食べられず我慢する生徒もいるんだそう。
貧困家庭の子どもが多い学校では、生徒の衣食住まで面倒を見ているケースもあるということです。
家族全員分の食糧を先生が自腹で買ってあげたり、バス代がなく通学できなくなった生徒に、自分の給料から定期代を出してあげた先生もいたといいます。
ブレイディ先生はこの本の中で、
貧困地域にある中学校の教員は、いまやこんな仕事までしているのだ。
この国は教育者をソーシャルワーカー(社会福祉士)にしてしまった。
ブレイディ先生 貧しい生徒を支援するボランティアに参加
ブレイディ先生は、貧しい生徒を支援するボランティアに参加しました。
・中古の制服を100円で売るボランティア
背が伸びても買い換えられず、サイズが合わない制服を着ている子や、制服が1着しかないため、洗濯が間に合わずビショビショの制服を着ている子も中にはいるんだそう。
制服のリサイクルは、着なくなった中古の制服を回収し修復。
バザーの日に50円~100円で売るのです。
ある日、息子さんが、「母ちゃんが縫った制服、僕も買える?」と一言。
「あなたは2着ずつ持ってるでしょ?」と話したところ、「友達にあげたいんだけど」という答えが返ってきました。
お兄さんのお古を着ている同級生。
丈が長すぎて陰でバカにされていたんだそう。
それをみた息子さんは、貧しい友達に制服を渡したいと考えたようです。
あの子にもプライドがあるから普通にあげるわけにはいかない。どうしたらプライドを傷つけずに渡せるのか考え抜いた末、友達を自宅に呼び、帰りがけに、
「これ、母ちゃんが縫った制服。ちょうど僕らのサイズがあったからくすねちゃったんだけど・・・いる?」と一言。
同級生からは、「でもどうして僕にくれるの?」と返答があり、「友達だから。君は僕の友達だからだよ」と制服を渡したということです。
少年は嬉しさのあまり、涙しながら帰宅していたんだそう。
イギリスにはこのような貧困問題があるんですね。
中古の制服を渡す、ということで、友達のプライドを傷つけずにできるよう考えた息子さん。
同級生とも友達として仲良く学生生活を送っているようです。
傷つけずに、と考えての行動。とても優しいですね。
イギリスの小学校では教科書を使わない!
イギリスの小学校では、日本では当たり前のように使われている教科書を使わないということです。
小学校には教科書がなく、先生が配るプリントを中心に授業を行っているんだそう。
日本のように国が定めた教科書がないので、学校の先生の力量で子どもの学力に差が出ると言われる、ということです。
ブレイディみかこ先生のお子さんが通っている中学校。
イギリスは移民が多い 少年が目にした差別
イギリスは移民が日本より多いということです。
そのため問題が起こることもあるんだそう。
ブレイディみかこ先生のお子さん。
ある日、怒った様子で帰宅してきたことがあったということです。
「学校で差別的な発言をする子がいたんだ。絶対許せない」と息子さん。
息子さん自身が差別されたわけではないですが、同級生の気持を考えた上での言葉です。
母、ブレイディみかこ先生は、「その子はきっと無知なんだよ。誰かが言っていることを聞いて真似してるだけ。知るときがくればその人は無知じゃなくなる」と話したということです。
本の中ではこう記されています。
多様性はうんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う
日本で暮らす外国出身者はわずか2%
一方イギリスで暮らす外国人出身者は全国民の14%以上もいるのです。
その後も差別発言をやめない同級生は、いつしか他の同級生たちから無視されることに。
周りから無視され、いじめられるようになってしまったのです。
実は、彼をいじめていたのは、彼が差別発言をしていた子ではありません。
直接関係のない子たちでした。
すると、また息子さんが、母ちゃん聞いてよ!と帰宅。
「ひどいことを言われた子たちがいじめてるんじゃなくて、何も言われたことのない関係のない子たちがいじめてるんだ。それが1番気持ち悪い!」と息子さん。
ブレイディみかこ先生は、「人間って寄ってたかって人をいじめるのが好きだからね」と答えたところ、息子さんは、驚きの発言をしました。
「人間は人をいじめるのが好きなんじゃないと思う。罰するのが好きなんだ」と息子さん。
正義を振りかざして他人を攻撃することへの反発を感じていたのです。
ブレイディ先生が知らない間に息子は成長していました。
先生も、息子さんから教えられることが多々あるんだそう。
「子供の方が柔軟じゃないですか、考え方が。だから新鮮です」とブレイディ先生。
息子さんからの話を聞き、相手の子を責めるわけではなく、中立で柔軟な答えを返しているブレイディ先生。
先生の息子さんへの接し方も素晴らしいと思うのですが、息子さんの言葉で考えさせられることが多いですね。
いじめは大人の社会でも起こっていて、子どもだけの問題ではありません。
つい、いじめたい人種も存在する、と考えてしまうのですが、息子さんのように、”罰することが好きなんだ”という言葉に納得してしまいました。
日本に行くと外人 イギリスでは日本人
息子さんは、日本に行くと外人と言われ、イギリスでは日本人と言われ、自分にはアイデンティティーがない、と悩んでいたということです。
しかし、一昨年のサッカーワールドカップでは日本を応援していたんだそう。
でも日本が負けたらイングランドを応援したり、複数のアイデンティティーを楽しんでいるところもある、とブレイディ先生。
柔軟性があり、日々成長している息子さん。素晴らしいですね。
イギリスの保育園で大人気!多様性を学べる絵本
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イギリスの保育園では、多様性を学べる絵本が大人気だということです。
・タンタンタンゴはパパふたり
子どもたちにとても人気の絵本。
動物園で恋に落ちた2羽のオスペンギンのお話で実話。
いつも仲良くいっしょにいる2羽。
彼らは、他のペンギンたちが卵を産み温めるのを見て、卵に似た石を拾って温め始めたということです。
そこで、飼育員はひらめきました。
石のかわりに他の親が放置した本物の卵をこっそり置いてみることに。
すると、交代で卵を温め続け、赤ちゃんのタンゴが誕生!
パパになった、というお話。
イギリスでは15年にわたるベストセラー。
多様性を学べる絵本としても最適ですね。
いろんな家族がいる、という多様性を学べることもあり、イギリスの多くの保育園に置いてあるということです。
イギリスの中学教育 演劇という教科がある!
イギリスの中学教育では、演劇、という教科があるんだそう。
言葉を使った自己表現能力、創造性、コミュニケーションを高めるための教科。
ブレイディ先生の家庭には、入学前に中学校から手紙が届いたということです。
そこには、入学翌日にオーディションを行うから準備をしておくように、と書かれていました。
新入生だけのミュージカルを上演するのが毎年の恒例行事なんだそう。
新入生の団結力、協調性を高めるために行われているそうです。
シチズンシップ教育
他にもイギリスの教育の特徴として、シチズンシップ教育(市民教育)というものがあります。
シチズンシップ教育とは、ボランティアや職業体験などを通じて社会との関わり方を学ぶ教育。
イギリスの中学校に通った経験を持つハリー杉山さんは、
「シチズンシップ教育というのは、人生の生き様や自分がたどるべき道っていうのをちょっとしたヒントを与えてくれるんですよね。ぼくはナイトシェルターというコミュニティーサービスをやっていたんです。
ナイトシェルターというのはホームレスの方々に食事を提供し会話する。苦しんでる人と会うってなかなかないじゃないですか。子どもの時って。
社会を何とか改善させようと教えてくれる科目なので、人を変える力もあるし、いずれ自分が父親になったら絶対子供たちに受けさせたいと思っています」と話していました。
ブレイディ先生の息子 エンパシーを教わる
ブレイディ先生の息子さん。
シチズンシップ教育で最初に教わったのは、エンパシー、いわゆる感情移入。
相手の気持ちになって考えることが重要、と教わります。
考え方が違う人の立場に立つ→問題解決力が身につく
ブレイディ先生の息子さんは、学校で「エンパシーとは何か」という問題が出た時、「他人の靴を履いてみる」と答えて満点を獲得しました。
これはイギリスのことわざなんだそう。
本当に他人の靴を履くのではなく、例えば男性が女性のハイヒールを履いたら、足の痛みや歩きづらさがわかる、という感じで、自分とは違う立場の人の人の気持や考えを想像してみる、ということ。
イギリスではボランティア活動がさかん。
シティズンシップ教育が役立っているようです。
イギリスはホームレスが約32万人
2019年度の調査によると、日本はホームレスは4555人。
それに対し、イギリスでは約32万人といわれています。
日本の70倍もいるんです。
冬の寒い日、ブレイディ先生の息子さんは大人に混じり、ボランティアであたたかい紅茶をホームレスの方に提供しました。
イギリスの人口は日本の半分にもかかわらず、ホームレスの数は日本の70倍。
帰宅後の感想を聞くと、「最初は少し怖かった。でも、なんか僕かわいがられてこんなのくれた人もいたよ」と、キャンディの包み紙を見せてくれたんだそう。
ホームレスの人から物をもらっちゃっていいのかな?普通逆じゃない?ってちょっと思ったけど、でも母ちゃん、これって善意だよね?と、嬉しそうに笑っている息子を見たとき、ブレイディ先生が思い出したのはエンパシーという言葉でした。
自分と違う立場の人がどんな気持ちなのかを想像することがいかに大事なことなのか。
日本の授業では、先生が要点を解説し、生徒は板所を書き写すのが一般的。
イギリスの授業では、生徒が主体的に参加することを重視しています。
中には、中学生から専門的な職業体験を実施しているカリキュラムも。
ブレイディ先生の息子さん。
入学当初は、ノートの端っこに「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と書いていました。
この言葉が心に引っかかっていたブレイディ先生は、日本の雑誌に連載する息子の成長記のタイトルを、彼が走り書きした、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」という言葉に決めたのです。
1年半が経った頃、
「母ちゃん、僕が昔ノートに落書きした言葉をタイトルに使ってるじゃん。あれ、今考えるとちょっと暗いよね。あの頃はこれから新しい学校で何があるんだろうなって不安だったし、差別も経験してちょっと暗い気持ちになってたけど、今はそんなことないなぁ。今はどっちかっていうとグリーンだね」と息子さん。
「グリーンって未熟とか経験が足りないって意味もあるでしょ?僕は今そのカラーなんだと思う」と話したんだそう。
ブレイディ先生は、なんだか急に大人びて見えてきたということです。
先生はこの本の最後をこんな風に結んでいます。
人種が違う両親を持っているから、移民から生まれた子どもだから、時々ブルーになることもあるなんていうのは、きっと前時代的なコンセプトなのだ。
イエローでホワイトな子どもがブルーである必要なんかない。
色があるとすれば、それはまだ人間としてグリーン
未熟なティーンの色があるだけなのだ。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとグリーン。・・・いまのところは。
きっとこの色は、これからも変わり続けるに違いない。
1年半までブルーと綴った息子さんも今年で13歳。
今は、政治と数学に興味があるそうです。
イギリスの学校生活。
全く知らなかったので驚きました。
日本は恵まれている部分もありますが、シチズンシップ教育など、人間として大切なものを学ぶ機会となり、見習うことで日本も大きく変わりそうな印象を受けました。
また、ブレイディ先生と息子さんの関係も素晴らしいですね。
感じたことを素直に話せる親子関係で、お母さんも中立の考え方。
息子さんの質問にも誠実に対応し、成長を見守っています。
「世界一受けたい授業」に著者・ブレイディみかこ先生が登場し、本について解説してくれましたが、とても素晴らしい本なのだろうな、と思いました。
大人も子どもも、どちらも必見の本だと思います。
まとめ
3月7日に放送された「世界一受けたい授業」、本屋大賞で話題になったノンフィクション本「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」の著者・プレイディみかこさんが授業を行ってくれました。
イギリスの港町・ブライトン。
日本人のライター・ブレイディみかこ先生とアイルランド人の夫の間に生まれ、厳格なカトリックの小学校で児童会長をしていた息子が中学校に進学し、学生生活を綴った成長記です。
ただでさえ難しい年頃なのに、毎日が事件の連続。
そんな時、息子のノートの片隅に「I'm yellow,white,and blue・・・a little bit」(ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー)と書かれているのを見て、ブレイディみかこ先生は、息子に何があったのかを気にして、本のタイトルを決めたんだそう。
◆イギリスは貧困家庭が多い学校もある
イギリスの公立校には、フリーミール制度があるんだそう。
フリーミール制度:失業保険や生活保護を受ける貧しい家庭の子どもは食べ物が無料
学食で好きな食べ物や飲み物を無料で受け取ることができるというもの。
しかし、フリーミールには限度額があり、1日およそ320円。(1ヶ月約6400円)
そのため、夏休み中はずっとお腹が空いていた、という子どももいるようです。
◆イギリスの学校では教科書を使わない
小学校には教科書がなく、先生が配るプリントを中心に授業を行っているんだそう。
日本のように国が定めた教科書がないので、学校の先生の力量で子どもの学力に差が出ると言われる、ということです。
◆イギリスは移民が多いため、差別もある
◆イギリスの中学教育では、演劇、という教科がある
言葉を使った自己表現能力、創造性、コミュニケーションを高めるための教科。
◆シチズンシップ教育
シチズンシップ教育とは、ボランティアや職業体験などを通じて社会との関わり方を学ぶ教育。
イギリスはボランティア活動がさかんで、相手の気持ちになって考えることが重要、と教わります。
考え方が違う人の立場に立つ→問題解決力が身につく
◆1年半を経た息子さん
入学当初は、ノートの端っこに「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と書いた息子さん。
1年半が経った頃、「母ちゃん、僕が昔ノートに落書きした言葉をタイトルに使ってるじゃん。あれ、今考えるとちょっと暗いよね。
あの頃はこれから新しい学校で何があるんだろうなって不安だったし、差別も経験してちょっと暗い気持ちになってたけど、今はそんなことないなぁ。今はどっちかっていうとグリーンだね」と息子さん。
「グリーンって未熟とか経験が足りないって意味もあるでしょ?僕は今そのカラーなんだと思う」と話したんだそう。
ブレイディ先生と息子さんの親子関係も素晴らしく、素直で優しい息子さんです。
柔軟性があり、思いやりがあり、強さも兼ね備えている様子。
話題のベストセラーということですが、大人も子どもも学ぶことが多い本だと感じました。